関節リウマチの治療
関節リウマチは慢性に全身性に(関節や肺臓や腎臓など)進行する炎症性疾患です。メトトレキサートや生物学的製剤、JAK阻害薬などが使用可能になり、関節リウマチの治療は大きく進歩しました。以前は多くの患者さんに手術が必要だったのですが、激減しています。
関節リウマチ初期の患者さんではまったく痛みがなくなるのが目標です。病気の進行を抑え、あるいは完全に治ることも夢ではなくなったのです。そのためには早期からの積極的な治療こそ有効です。
”痛みもこわばりもないので自分が関節リウマチだったのを忘れてました”と言われるのは専門医冥利につきます。すべての患者さんがそうなるように努力を続けています。
treat to target
関節リウマチを明確な数値目標を持って治療する。
tight control
関節リウマチの活動性や治療に対する反応をたびたび診て良い状態に保つよう厳格に治療する。
■この2つのポリシーがリウマチ治療のキーワードです。診察当日に血液検査の結果を見た上で患者さんに説明し治療を進めていく当クリニックの診療はたいへん有意義だと感じています。薬を出しっぱなしではよくありません。
■当クリニックでは日本リウマチ学会専門医・評議員である院長が患者さん一人ひとりに詳しく説明を行い、治療方針について納得したうえで治療を行っています。
■現在のリウマチ治療の中心はリウマトレックス/メトトレキサートで、当クリニックでは約70%の患者さんに投与しています。効果不十分な患者さんにはほかの抗リウマチ薬と組み合わせる併用療法を積極的に行っています。高価な生物学的製剤に劣らない効果も報告されています。メトトレキサートを内服するとムカムカなどの胃腸障害が出てつらい思いをされている患者さんには最近使えるようになったメトトレキサートの注射製剤も選ぶことができます。
■十分な治療によっても腫れや痛みがわずかな関節に残るときには、関節内へのステロイド注射を行っています。内服薬を増やすよりも副作用が少なく、骨破壊の進行を抑えることができます。
■リウマチ外科グループにいた整形外科医ならではのテクニックで、時に超音波エコーガイドを駆使して指の小さな関節の病変も押さえ込みます。
■現在最も効果のある治療である生物学的製剤(アクテムラ、エタネルセプト、オレンシア、シンポニー、ヒュミラ、インフリキシマブ、シムジア、ナノゾラ)やJAK阻害薬(リンヴォック、オルミエント、スマイラフ、ジセレカ、ゼルヤンツ)による治療も行っています。どの患者さんにどの薬が期待できるのか。十分な評価が必要です。投与前後に結核や肝炎など十分な検査が必要ですが、これまでの治療で効果が不十分な患者さんに投与しています。
疾患についての十分な理解、B型C型肝炎や肺炎・結核罹患なしというしっかりした評価が必要です。
■生物学的製剤、JAK阻害薬は保険適応というものの高価な薬剤であり、生物学的製剤のなかにはオリジナル製剤と品質、効き目、安全性が同等と証明された後発品(バイオシミラー)もあり、薬の値段はオリジナルより安くなっており積極的に使用しています。
■関節リウマチの激しい痛みのために続けられそうになかった仕事を治療を始めたことで続けることが出来ている患者さんも珍しくありません。病気のために仕事をやめざるを得ないという病態は院長としては許容できないことです。痛みのために仕事や日常生活が制限されることのない状態が目標です。
またごく一部ですが関節リウマチが治癒になり抗リウマチ薬を中止しても再発しない患者さんもおられます。痛みと腫れがなくなり、血液検査がやX線検査、超音波検査で異常がない状態が1年以上続けば、投薬を中止してみることもあります。症状が再発しなければ関節リウマチが治癒したのです。
■関節リウマチはリンパ腫や間質性肺炎、貧血などもときに合併して重症化することもある疾患です。
■院長が医師になったころはまだメトトレキサートの使用が一般化しておらず、大学病院のリウマチ外来の患者さんも徐々に悪化して関節が破壊され手術になることが普通でした。メトトレキサートが使えるようになって以後、関節リウマチの患者さんの苦しみは減って手術もすごく減りました。世界中の専門医がメトトレキサートを使っています。合併症にじゅうぶんな注意を払いつつ治療していきます。
■関節破壊が生じていないか、年に一度程度はX線検査が必要ですし、高齢者やステロイドを使用されている患者さんでは骨粗鬆症対策も不可欠です。X線検査のできない医療機関での治療は考えられません。当クリニックではさらに院内での腰椎と大腿骨の骨密度検査が可能です。
生物学的製剤の点滴は長くかかることもありますが、ベッドあるいは革製のリクライニングシートで快適に過ごせます。自宅にも一台欲しい素晴らしいリクライニングシート、高かったんですから。
リウマチ患者さんも筋力強化や関節可動域のリハビリができれば、日常生活のうえでも動きやすくなるなど効果が現れます。自宅でのリハビリ体操のページにリンクしています。リウマチ体操
残念ながらすでに関節の破壊が
進行してしまった患者さんには手術という手段があります。膝、股、肘、肩、足関節の人工関節手術の成績は優秀ですし関節によっては関節固定術も有効です。
安静時や歩行時のつらい痛みがかなりなくなるのです。
もちろん、手術が安全に出来るかどうか術前に十分な検査と検討が必要です。
手術については高い実力と多数の実績があり院長もよく知っている病院にお願いしています。
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関節リウマチと妊娠
関節リウマチや炎症性腸疾患は若い女性の患者さんも多く、その妊娠、出産について以前はしっかりした治療指針はありませんでした。諦めていた患者さんも多かったと思われますが、研究者の長年の努力の結果が公表されています。
全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性特発性関節炎や炎症性疾患罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針
妊娠を考慮してもほぼ安全に使える薬がいくつもあり、治療の可能性は大きく広がりました。わたしたちのクリニックでも関節リウマチ治療をしながら妊娠出産できた患者さん、現在妊娠中の患者さん、妊娠をめざしている患者さんがいます。
妊娠以前から診療している患者さんが無事出産し子供連れで受診され、クリニックのスタッフと笑顔で話をするのを見るのは医師としても大きな喜びです。ベビーカーでも入りやすいクリニックです。
検査値を理解しよう
関節リウマチの治療では血液検査は欠かせません。
わたしたちのクリニックには高速血液検査機器があるので当日多くの検査の結果を見て今後の治療を考えることができます。
検査結果は当日患者さんにお渡ししていますが、アルファベットばかりでちょっとわかりにくいでしょうか。つぎのボタンでは検査の意味と結果を解説していきます。
検査値の説明
リウマチ患者のフットケア
第45回広島リウマチ研究会で主任看護師Kさんが関節リウマチ患者のフットケアについて発表しました。
リウマチ患者さんは足の変形によるたこの痛みに苦しんでいる方が多く、整形外科系の当クリニックでは専用の器具を設置し時間をかけてその治療に挑んでいます。医療関係者限定の研究会ですが、当時の広島大リウマチ科杉山教授をはじめ多くの方からお褒めの言葉を頂きました。
看護師さんの役割について2018年12月にも発表しました。
最近は簡易なアーチサポート装具も患者さんの満足度も高いのでよく使っています。
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